◆発達障がいとは


発達障がいとは、「脳の働き方に偏りがあり、物事の捉え方や行動に目立った違いが現れた事で、日常生活に困難が生じる状態」をいいます。 発達障がいのある子は、わがまま、自分勝手…等と思われる行動が見られるため、「しつけがなっていないからだ!」と親が責められたり、親自身がそう思い込んで落ち込んでしまう事も少なくないですが、「脳の働き方の偏り」が原因であり、親のしつけが原因ではないといわれています。

また、日常生活で困難が生じていれば「障がい」、そうでなければ「個性」ともいわれていて、「ふつう」と「発達障がい」の明確な境界線はないといわれています。






◆発達障がいの主な種類・症状・対応ポイント例

①自閉症スペクトラム(ASD)
②注意欠如多動性障害(ADHD)
③限局性学習症(学習障害)(LD)

①自閉症スペクトラム(ASD)

自閉症スペクトラムとは、「自閉症やそれによく似た特性のある発達障がいの一群」をいいます。
「スペクトラム」は、「連続体」という意味を持ちます。特性や症状の現れが強いものから弱いものまで連なっています。
多くは、3歳以前に発現し、1歳半までに診断可能とされています。ただし、特に、知的障害を伴わない場合は、言語や対人関係の困難の明確化に時間が掛かり、診断が遅れる事もあります。


《症状》

・言葉や感情の表現が苦手で、人と上手く関われない、意思が通じ合いにくい。

・興味の偏り、こだわり強い、同じ事を繰り返したり、言葉をそのまま受け取る、変更を嫌いやすい。

・感覚敏感及び鈍感過ぎる、不器用さを伴う。

など。 


《対応のポイント例》

◎言葉掛けはシンプルかつわかりやすく伝えます。
⇒あいまいな表現、相手の立場で考えるのが苦手なので…
 (例)「ちょっと待って」より、「5分待って」や「○○が終わってから」などの方が良いです。

◎見てわかる伝え方をします。
⇒視覚優位傾向で、耳から聞く言葉より、目で見る情報が入りやすいです。見本や絵・写真・実物を使って伝えます。

◎事前告知をします。
⇒特に、初めての事等は、見通しが持てず、パニックになる事も多いです。変更にも状況に応じて、事前に告知してあげると良いです。また、終わりを具体的に示す事も大切です。


②注意欠如・多動症(ADHD)

注意欠如多動症は、「不注意」「多動性」「衝動性」が主な特性です。
これらが12歳以前にあり、かつ年齢や発達にそぐなわずあり、場所が変わっても一貫して見られる時に診断されます。
原因は不明だが、先天的な脳の機能障害であり、脳の前頭前野にある実行機能の働きが弱いとされます。
不注意優位型、多動・衝動性優位型、両立型のタイプがあります。


《症状》

・不注意がある。
⇒忘れ物をしやすい、紛失物が多い、同ミスの繰り返し、興味ある事は集中し過ぎる、興味のない事の注意の持続が苦手。

・多動性がある。
⇒落ち着きなくじっとしていない、座っていても手足がそわそわしている、常に動き回る、お喋りが止まらない。

・衝動性がある。
⇒待つことや我慢が苦手、思いついたらすぐ行動に移す、話に割り込む、要求が通らないと感情が抑えられない、独創性が強い。

など。


《対応のポイント例》

◎刺激や情報量を減らします。
⇒見えるものや、聞こえる音などに反応しやすいので、周囲の刺激を減らす様にします。また、装飾等にも気にならない様に配慮が必要です。パーティション(つい立て)の活用も良いです。

◎注目すべきところを明確化します
⇒注目すべき所を示し、こまめに声掛けするなどして、集中が続きやすくします。言葉掛けの他、絵や写真、文字など、視覚的に示す工夫もよいです。

◎行程をスモールステップで教えます。
⇒行動を1つずつ区切る等、行程をわかりやすく伝えます。
 1つの事をきちんと終わったら次に移る行程の積み重ねをします。その際、終わるごとに出来た時には、褒めて達成感を持たせる工夫も次へ進む意欲へつながるので大切です。

◎見通しを持てる様にします。
⇒いつまで待てば良いのかわからず動いてしまう事もあります。いつまで我慢したら良いのかをはっきりわかって、見通しが持てる様に工夫します。「○○が○回終わったらおしまい」など、わかりやすい声掛けや、時計の針が△時のところに来たら始める等の提示のほか、キッチンタイマーや目で見て時間の経過がわかるタイムタイマーなども有効であります。

◎動きたい欲求にも配慮します。
⇒課題の中に適度な感覚を取り入れたもの(身体を揺する、押す、飛び跳ねるなど)を入れるなどの工夫がある事で、動きのコントロールがしやすくなる事もあります。

◎思い出して気づける様な工夫を。
⇒衝動的な行動をする前に少しでも間をおいて考え、気づける工夫が必要です。また、「△△はだめ」など否定的な声掛けではなく、「○○します」など、適切な行動を肯定的に声掛けします。


③限局性学習症(学習障害)(LD)

「全体的に知的な発達はないですが、(1)聞く、(2)話す、(3)読む(ディスレクシア)、(4)書く(ディスグラフィア)、(5)計算する(ディスカリキュア)、(6)推論する(長文読解、応用問題、証明問題、図形問題、示されていない事を推測する など)の能力のうち、特定するものに著しい困難を示すもの」であると言われています。
脳の先天的な機能障害と推定されていますが、視覚・聴覚・知的・情緒障がいや、環境的な要因が直接の原因となるものではないと言われています。
本格的な学習が始まる就学以降に気づかれる事が多いです。
特定のもの以外の学習能力は優れている人も多いので、なまけている、努力が足りないと誤解される事もあります。


《症状》

・読む事が苦手である。
⇒(例)意味で区切ることが出来ず、1字ずつ読む。文字や行を飛ばして読む。読み方がたどたどしい。形の似た文字を読み間違える。

・拗(よう)音(「きゃ」「しゅ」「ちょ」など小音)や促音(「こっぷ」「あっち」など詰まる音)などの発音が出来ない。文の音読は出来ても、意味が理解出来ない…など。

・書く事が苦手である。
⇒(例)形の似た文字や漢字等を書き間違う。鏡文字を書く、文法的な間違い、文字のバランスが悪い、板書が出来ない…など。

・聞く事や話す事が苦手である。
⇒聞き間違いが多い。筋道を立てて話す事が出来ない。言いたい事を言葉で上手く表現出来ない。相手の言う事が理解出来ない。長い話に集中出来ない、違う言い回しで話せない…など。

・計算や推論が苦手である。
⇒指を使わないと計算できない。計算は出来るのに、文章題になるとわからなくなる。
図形・表・グラフ等も問題が理解出来ない。数字の位や繰り上がり・下がりなどが理解出来ない。証明や因果関係の理解が出来ない。推測が出来ない。作業時間の配分が出来ない…など。


《対応のポイント例》

◎子どもの苦手に合わせて工夫をします。また、追視や注視等をしやすい教材を工夫します。
⇒(例)マス目からはみ出る、文字のバランスが悪い~フレームシートを使う等。

◎どこを読んでるかわからない~窓付きシート、文節を区切る、ラインを引く等。
⇒(例)作文が書けない~付せんメモを活用し、場面を整理する等。

◎何に困っているのかを早期に見極めます。
 日常生活の様子を含め、何に困っているのかを具体的に見ていきます。
⇒(例)見る力が弱い?聴覚過敏がある?等。

◎しからず、具体的な方法を伝えます。
 出来ないものについては、「何で出来ないの!」ではなく、「こうしてみるといいよ。」等の様に、わかりやすく具体的に伝えます。

◎自信をつけて意欲を持たせる工夫が必要です。

◎苦手なものは、課題を細かく切る等の工夫や、出来たらその都度褒める事で、達成感を持たせるようにすると良いです。